お店に舞い込んできた青い鳥。
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毎日色々なことが起こります。
午前中にお店を開けて間もなく、ご来客があり、その方と
お話をしていました。
そこへ、見知らぬご年配の女性が玄関に来られました。
「少し、ご相談したいことがありまして・・・」と、仰って、
先にいらっしゃっていたお客様と、入れ替わりにお店に
入ってこられたのでした。
お話を伺うと、去年の今頃にその方の親友の女性が
ご病気でなくなったそうで、その女性は生前、京都で
呉服屋さんを一人で、頑張って続けて来られていた
そうです。
ご高齢になられてからは、、出入りの業者の方に、お店の
商品を委託して、販売してもらわれていたそうでした。
その女性には、アメリカに在住されている妹さんが
お一人いらっしゃって、丁度一周忌なので京都に
来ておられるとのことでした。
去年、女性が亡くなったときに、商品を預けている業者
さんに、一年後の一周忌に、残った商品を返却してもらう
約束をしていて、生前女性がお世話になっていた、弁護士
さんの事務所に昨日届けられたそうでした。
届けられた商品は、最期まで、その方が大切にしていた
高価なものばかりだということでしたが、間もなくアメリカに
帰る妹さんには、持って帰ることもできずに、その商品を
どうしたらよいのかも分からず、また本当に価値のあるものか
どうかも分からないので、呉服屋さんの方に見ていただき
たいということでした。
鶴のお店の近くには、京都裁判所があり、この付近には、
弁護士さんをはじめ、法律関係の事務所がたくさんあります。
お店に訪ねてこられた方は、商品の届けられた弁護士さんの
事務所へ行く途中で、偶然鶴のお店の前を通りがかられて、
何とか相談に乗ってもらえたらと、思い切ってお店に入って
来られたのでした。
京都にあったその呉服屋さんは、残念ながら私は名前を存じ
上げませんでしたが、小さなお店ではあったそうでしたが、大変
センスが良く、繁盛していたそうです。
これも何かのご縁かと思い、「私で分かることでしたら」と、
商品を拝見することになりました。
暫くして、近くの弁護士事務所から、アメリカから来られている
妹さんも一緒に、反物や帯を持ってこられました。
確かに、どの商品も、大変良いものではありましたが、保管や
扱いが悪かったためか、古い年代のものなのか、どの商品も
染みや、やけなどが見られました。
かと言って、古着屋さんのようなところでは、いくら良いものでも
それなりにしか、扱ってはもらえません。
「他にご親戚はないのですか?」と、お尋ねすると、関東の田舎に
親戚が一軒あって、娘さんもいらっしゃるとのこと。
「そこの娘さん達は、着物なんてきないのですよ。」と、仰いましたが、
「これが届いたら、着たくなられるかもしれませんよ。」と、私は言いました。
もし私が、亡くなった呉服屋さんの女将さんだったら、自分が気に入って
大事にしていた商品が、知らない古着屋さんに引き取られるよりも
自分の身内に譲って、何かの時に着てもらえるなら、その方が
嬉しいと思います。
身内の方が着られるのなら、商品に少々難があっても、問題ありません。
そうお勧めすると、アメリカの妹さんも、親友の方も、納得してくださいました。
そして、お世話になったとお礼を仰って、記念にどれか、私に着て頂きたいと
言ってくださったのですが、殆どの物が私には派手でした。
でも、その中で一点だけ惹かれた帯がありました。
ピンクに青い鳥が織り込まれた、すくい織りの帯です。


前太鼓は、葉っぱの模様です。
この帯も、とても良いものと思われますが、残念なことに、少し染みがあります。
それでも、この青い鳥は、本当に幸せの青い鳥なのかも知れないと思い、
とても良心的に譲っていただくことになりました。
同じように、呉服のお店をされていた、一度もお目にかかることのなかった
女将さんの仕入れられたお気に入りの帯を、不思議なご縁で私が受け継ぐ
ことになりました。
この青い鳥は、その女将さんからのエールを私に届けてくれたと思って、
大切に愛用したいと思っています。
早速仕立てに出して、また締めさせてもらった時は、お披露目させていただきます。
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